第1 請求
被告は,原告に対し,140万円及びこれに対する平成17年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2 事案の概要
本件は,被告が,原告に対する保証債権が存在しないことを認識し又は認識しうべきであるにもかかわらず,債務弁済契約公正証書に基づき,原告の預金債権を差し押さえたとして,原告が,被告に対して不法行為に基づき,慰謝料100万円及び弁護士費用40万円の合計140万円並びに不法行為後の日である平成17年7月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。1 前提となる事実(証拠により認定した事実は各項末尾に証拠を示す。)
主債務者Aと被告との貸金取引等
ア被告は,Aに対し,別紙取引履歴1及び同2の「貸付日」欄記載の日に,「貸金額」欄記載の金銭を貸し付け,原告は,被告との間で,各同日,各同貸金債務を保証するとの合意をした。(乙1,弁論の全趣旨)被告は,平成9年7月31日に300万円を貸し付けた(以下「第1契約」という。)際,利息及び手数料として19万8000円を天引きし,平成16年6月29日に200万円を貸し付けた(以下「第2契約」という。)際,利息として5万6219円を天引きした。(乙1)
イAは,被告に対し,別紙取引履歴1及び同2の「支払日」欄記載の日(ただし,平成9年7月31日及び平成16年6月29日を除く。)に,「支払額」欄記載の金額を弁済した(以下,別紙取引履歴1記載の取引を「第1取引」,同2記載の取引を「第2取引」という。)。(乙1)
公正証書の作成
平成16年8月11日,公証人Bは,A及び原告の代理人であるC並びに被告の代理人であるDから嘱託を受け,債権者を被告,債務者をA,連帯保証人を原告とし,前記平成16年6月29日付け消費貸借契約(第2契約)に基づく債務の弁済契約及び強制執行受諾文言を本旨とする平成16年第10920号債務弁済契約公正証書(以下「本件公正証書」という。)を作成した。(甲1)債権差押え
被告は,平成17年7月23日,山形地方裁判所に対し,本件公正証書に基づく強制執行として,原告の株式会社殖産銀行に対する預金債権及び原告の株式会社山形銀行に対する預金債権(以下「本件各預金債権」という。)の差押えを申し立て,山形地方裁判所は,同月26日,本件各預金債権についての差押命令を発し,本件各預金債権は,同日,差し押さえられた(以下「本件差押え」という。)。2 争点
被告は,第1取引と第2取引を一連一体のものとして,Aが被告に弁済した金額に基づいて,利息制限法所定の制限利率を適用した計算により,Aの債務が消滅し,保証債務の附従性により原告の保証債務も消滅したことを認識し,又は認識すべきであったか。第1取引と第2取引が一連一体のものとは認められないとしても,被告は,Aが第1取引により発生した同人の被告に対する過払い金返還債権をもって,第2取引により発生した被告に対する貸金債務とその対当額において相殺し,保証債務の附従性により原告の保証債務も消滅することを認識し,又は認識すべきであったか。
原告の被った損害額
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3 争点に関する当事者の主張
争点1 について
ア原告の主張Aが第1取引及び第2取引において被告に弁済した金額に基づいて,利息制限法所定の制限利率を適用して計算すると,32万8012円の過払い金が発生しており,保証債務の附従性により,原告の保証債務も消滅している。
被告は,貸金業者として,Aから受領している利息及び損害金が前記制限利率を超えていることを認識し,同人との取引状況を把握しているところ,本件は借入限度額を定めたリボルビング貸付によるものであって,全ての取引を一連一体のものとして計算すべきであるから,前記過払い金が発生し,原告の保証債務も消滅していることを認識し,又は認識すべきであった。それにもかかわらず,被告は,本件差押えの手続をとった。
イ被告の主張
第1取引は,平成11年11月24日までに完済されて完結し,その後,相当年月を経過して,平成16年6月29日に改めて別の新たな取引が行われ,平成11年11月24日から平成16年6月29日まで,被告とAとの間において,何ら取引は行われておらず,第1取引と第2取引は別個の取引であり,各別に法的効果などが論じられるべきである。原告は,Aの連帯保証人として,金銭消費貸借契取引が行われるたびに,被告と連帯保証契約を締結している。
平成16年6月29日の第2契約及び連帯保証契約は,平成9年7月31日の第1契約及び連帯保証契約に係る清算が完結したことを相互に確認した上で,新たに締結されたものである。
したがって,原告と被告との間で法律関係を清算しようとするときは,平成16年6月29日の第2契約及び連帯保証契約を基礎とすべきである。
その結果,第2取引については,利息制限法所定の制限利率を適用して計算しても,相当額の貸金残高がある。
被告が本件差押えの手続をとったことは,適法な権利の執行であり,これにより差し押さえられた原告の財産の内容及び額などに照らしても,相当性及び妥当性が認められる。
争点2 について
ア原告の主張原告及びAはE弁護士に債務整理を依頼して,同弁護士が平成17年4月8日に被告へ発出した介入通知は遅くとも同月9日に被告山形支店に到達した。
その時点においては,Aと被告との貸金取引が一連一体のものであるとは認められなくても,第1取引については既に過払いとなっており,第2取引について貸金残高があるとしても,弁護士が介入した以上,この貸金債務と前記過払いによる不当利得金返還債権について相殺の主張がなされ,結果的にこの貸金債務が消滅し,保証債務の附従性により,原告の保証債務も消滅することを明確に認識できたにもかかわらず,被告は,故意又は少なくとも過失により,前記保証債務が消滅することを看過して本件差押えの手続をとったものである。
イ被告の主張
争う。
被告は,民事執行手続きを取る際にも,法令及び裁判所の基準に従って判断していた。
争点3 について
ア原告の主張慰謝料100万円
原告は,本件差押えにより,重大な精神的苦痛を被った。
その精神的苦痛を慰謝するには少なくとも100万円が必要である。
弁護士費用40万円
原告は,前記慰謝料を請求するため,弁護士である原告訴訟代理人である弁護士に訴訟を依頼せざるを得ず,その弁護士費用として40万円を支払うことを約した。
イ被告の主張
慰謝料
争う。
弁護士費用
不知
残債務を完済
原告が,平成13年7月に,甲建物につき,出火原因不明の火災によって約3700万円の火災保険金を受領したことは認め,その余は否認ないし争う。原告は,建築工事を業とする訴外C工務店を経営する外,スナックの経営をしているが,宅建業法の免許を有することなく不動産の売買などの仲介を行って不正不当な利益を得ることを業とするいわゆる不動産ブローカーの仕事をしていることはない。
また,原告は,平成4年から5年に,知人の訴外Eの勧めで,訴外Bが関係する本件建物の敷地及び隣接土地を,当時原告が所有していた蓮田市の土地と交換し,不足分を差額金として支払う契約をしたが,契約の履行について様々の問題が生じたため,原告訴訟代理人に解決を依頼して平成7年12月16日に,訴外B側と和解が成立したものであり,訴外Bとは,上記の取引の際に初めて会い,訴外Aとは,上記の取引で会うこともなかった。
同(1)Dの事実のうち,訴外C工務店が,決算書上経常赤字が発生していたことは認めるが,その余は否認ないし争う。
訴外C工務店は,債権者らから返済を迫られその支払いに困窮していたということはない。
同(1)Eの事実のうち,原告が,本件建物と甲建物について,共同担保で,埼玉県信用金庫を債権者とする極度額7000万円の根抵当権を設定したこと及び原告が,埼玉県信用金庫に負債があったことは認め,その余は否認ないし争う。
原告は,埼玉県信用金庫に対する負債について,約定通りの返済金を支払っており,平成16年に,甲建物をその敷地利用権(地上権)と共に売却した際に,残債務を完済している。
また,本件建物の敷地になされている訴外Dの抵当権設定仮登記は,原告が,訴外Eに渡していた原告の委任状や印鑑登録証明書を訴外Dに渡し,原告の知らないままに登記がなされたものである。
同(1)Fの事実のうち,本件建物の敷地が,都市計画法上の市街化調整区域に指定されており,かつ,農業振興地域の土地であるため,建物の建て替えができないという規制を受けていることは認め,その余は否認ないし争う。
原告は,本件建物が焼失した場合には,建物を失うばかりではなく,その敷地上に建物を新築することもできなくなるのであるから,原告が,本件建物の放火することなどあり得ない。
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